本や洋服が増えて
どーにもこーにも部屋が汚くて仕方がないので、
無理無理にねこちゃんを誘って
渋谷のロフトと東急ハンズに本棚を買いに行ったその帰り、
井の頭線の中で、ひっさびさに、おもしろい人に出会った!
渋谷から吉祥寺までの各駅停車しかなくて
満員ではないけれど、席はなく
歩き回ったせいで足は棒のようになっていて
疲労がピークに達して、うんざりしていたその時……
「必殺は沖雅也がイチバン美しいんだよね……」
という声が背後から聞こえてきた。
おいおい、また必殺の話かい……と振り返ってみると、
そこには、なんとなく馴染みのある雰囲気の、
でもまったく知らない30代半ば~40代前半の男性が、
缶ビール片手に席に座り、ゴキゲンな調子でしゃべっていた。
赤いヤッケにジーパンにリュックにスポーツバッグ……
というのが親しみの源泉かと思いきや、そーではない。
あの語り口調に、マニアならではの馴染みがあるのだ……。
赤ヤッケ氏は、いきなり
「水戸黄門は、助さんがもっとスケベでなきゃだめだ」
ということを、とつとつと語り始め、
右に座っている女性は、缶チューハイ片手に
うんうんと頷いてあげているのに
赤ヤッケ氏は、自分の語りペースを崩さず、
スポーツバッグから次々と
缶ビールを出して飲み始めた。
そのうち、話は「暴れん坊将軍」へ。
「あれってさあ、見ているうちに、
なぜか吉宗がカッコよく感じるんだよねえ……」
なんて言ってるのが、おかしくて仕方ない!!
そんなのみんな、思っているよ~。
話はまたまた『必殺』に戻ったり、『大岡越前』に行ったり、
『江戸を斬る』に行ったり、『大江戸捜査網』に行ったり。。。
仲間らしき左の青いシャツの人は、なんだか相槌打つのも
メンドクサそうだが、
私とねこちゃん(実は時代劇マニア)はおかしくて、
おかしくて吹き出すのをじっと我慢していた。
言い得て妙!なところもあるし、
なんだか的外れだけど、変にツボを押さえていて
おかしいところもあるし。。。
でも、「必殺では沖雅也さんがイチバン!」というのは
同感、同感。。。
赤ヤッケ氏は、いい気分になってきたのか、
スポーツバッグから、ガラガラと大きな音をさせながら、
ビニール袋ごと缶ビールを取り出し、膝の上に置いた。
30本は入っていたと思う。
中身の入っているのも、飲んだ後のも含めて。
なんだ、次から次から出てくるから変だと思ってたけど、
こんなに持ってたんだ~。
赤ヤッケの人は、
「でね、酒井和歌子のやった奥さん役が、これまたいいんだよ……」
とか言いながらビニール袋に顔を突っ込んで、
中身の入っているのを選別している。
橋幸夫さんや、中村梅之助さんの話になり、
『遠山の金さん』で話が落ち着くかなあ……と思ったら、
最後はやっぱり
『必殺』の沖雅也さんの話に。
渋谷から吉祥寺に着くまで、30分余り
居酒屋で飲んでいるが如く、
終始ごきげんだった赤ヤッケの人。
私とねこちゃんは疲れも忘れて
あの人の時代劇論に聞き入った。
おもしろかったなあ~。
ねこちゃんは、ちょっと悔しそうだった。
自分も必殺が好きだからだ。しかも沖雅也さんが。。。
「なんであの人に、ちょっとそこのベンチで
飲みませんかって、言わなかったの?」
と言うと、
「そんなことできませんよー。知らない人なんだし」
と呆れられてしまった。
そうかなあ……。
あんな人、そうはいないから、出会いを大切にした方が
いいと思うけど。。。
その夜。
沖雅也さんの出ている必殺シリーズを
ねこちゃんがDVDでガン見したのは
言うまでもない。